day 16 船の墓場、アラル海のかつての港町ムイナクへ
昨日のうちに手配を頼んでおいた車に乗って、ヒヴァの街を朝7時に出発。かつてのアラル海の港町ムイナクを目指します。
まずは車に燃料を補給。ウズベキスタンは天然ガスの産出国で、ここではガソリンより天然ガスのほうが安いため、ほとんどの車は改造してメタンガスやプロパンガスで走っています。この車はプロパンガス。ただ、メタンのほうが人気らしく、メタンガスのガススタンドは長蛇の列でしたがプロパンは閑散。ドライバーは「こっちは空いてるんだよ」と微妙に自慢顔。さっさとガスを入れて先を急ぎます。
アムダリア川を渡ります。かつては浮き橋しかなかったそうですが、今は立派な橋が。大きな川ですが、灌漑によるこの川の水量の低下が世界第4位の大きな湖であったアラル海の縮小を招き、世界最大級とも言われる環境破壊につながったと言われています。
しばらく鉄道線路と平行して道路を走ります。この線路はこの先カラカルパクスタン自治共和国の首都ヌクスを通ってロシアまで続く線路。100両近い貨車を連ねた貨物列車が走ります。東西をつなぐ物流の動脈になっているようです。
反対側の窓の外には、小高い丘の上になにやら輪っかのような遺跡が。この辺り、キジルクム砂漠は、古代ホレズム王国の文明が栄えた地で、これも城塞の一つだと思います。
しばらくするとヌクスの街を通過。
この辺りから白い地面が目立つようになります。雪でもなく、これは塩が析出している地面です。灌漑しても水が蒸発するばかりの土地では、塩だけが残ってその土地は最終的には耕作できなくなってしまいます。
しばらく走り、はや、昼の12時。街道沿いの小さな食堂で昼食休憩です。
昼食が終わればまた荒涼とした大地を走り続けます。
所々わずかな草地では放牧が。ムイナクが近づいてくると水面も見えてきます。
午後1時半頃、ようやくムイナクの街に到着。漁港の町であることを誇るように、カモメや魚を描いた街の看板。街中にも船があったりするものの、あまりにも閑散とした街並み。
さらにそこから道をまっすぐ行った突端は、水面ではなくどこまでも続く砂でしかありません。ここはかつての岸辺。ここには看板があり、これまでのアラル海の衛星写真が飾ってあります。1960年、日本の東北地方と同じぐらいの面積があった世界第4位の大きさを誇る湖であったアラル海は、その主要な水源であったアムダリア川が灌漑事業のために水量が低下したことなどで水位が低下、徐々に縮小していきます。
そして、2009年にはほぼ「消滅」。湖岸はこのムイナクの街から80km近く先に後退してしまったのです。大アラル海の水量はかつての6%にまで減少しているということです。
今、ムイナクには、乾いた空気と風の音が響く中、取り残された船の墓場だけが残っています。
遺棄され朽ち果てた船は、遠く、地平線の先にあるわずかに残された海を見ているのでしょうか。
最大の産業であった漁業を失った街もまるでゴーストタウンのようです。ほとんど人影を見ないこの街の姿は、まるで終末の世界を見るようです。
街の博物館があるということで行きましたが、改装中なのか閉館してしまったのか、廃墟のような状態でした。その中にぽつんと置かれていた漁師の像。彼が持っている魚はもうここにはありません。
再び、来た道を戻り、ウズベキスタンの西部を占める「カラカルパクスタン自治共和国」の唯一と言ってもいい都市であり首都のヌクスに戻ります。
【今日の移動距離】600km 【累計】9050km